パクソン郡のコーヒー村へ〜チャンパサック県の旅2

スタディツアーというものは最近たくさんあるそうで、
大体は「もっと現地のことを一歩踏み込んで知りましょう!」という
趣旨で、あちこちいろんなところでそこに詳しい人がガイドをして
社会科見学みたいなことをするんだそうです。

今回私がお邪魔したのは、「はじめに」で書いた通り
ドリップパックプロジェクト(ドリプロ)のコーヒー農村スタディツアー。
ドリプロは大学生が主体で、大半はラオス初めて。
海外旅行自体初めてという人もいました。
このツアーではラオス先輩である人類学者の箕曲さんがコンダクターとなり
パクソンを拠点にしてあちこちの村をめぐります。
私が参加した二日間は、学生さんたちを班わけして
それぞれ農家のお宅にお邪魔して
通訳(英⇔ラオ)付きでインタビューをしてもらい
戻ってきてからミーティングで発表してもらうというものでした。
なにせここは箕曲さんのフィールドなので、
まー頼りになります。

(現地のおっちゃんとラオ語南部訛りで話す箕曲さんの雄姿)

ミーティングでのコメントも、とっても勉強になりました。
(私もラオスはまだぺーぺーですので)


まったく予定通りに進まず、
私が到着したときにまだ出発していなかったのは
今が雨季だからです。
だって、パクソンから村に行く道の入り口がすでにこんなのなんだもの。


(泥にはまって動けないトラック)

箕曲さんは「もう雨季のスタディツアーはしない!」と
言っていましたが、そりゃそうだ。
勧められて市場で長靴を買ったのですがいきなり大活躍。
これはすごい。やばい。
サムヌアのあたりは本気で山なのでこれの比ではなかったはず。
行けなくて、よかった…かも…?

もちろん村までの道がこんな泥沼ばかりでは全然ないのですが、
基本的にはずっと泥道を1時間ほど走ると村に到着。
(舗装って、大事なんですねほんとに)
さっそく通訳さんがコーヒーの木を示してくれます。
私はコーヒー素人なので、「おおこれがコーヒーか!」と写真をぱちり。

確かに、言われてみると村中コーヒーの木がいっぱい。
村への道から見える景色もコーヒーの木がいっぱい。
他の作物も育ててはいるのですが、ほとんどが自給用だそうです。
コーヒーの力はすごい。

(季節外れに赤く熟した実を付けたコーヒーの枝。
 食べるとリンゴっぽい「たくさんはいらないけど意外とイケる」味)

村に入るともうお昼だったのでまずはごはん。

続いて村の代表(的)な方のご挨拶とお話し…の前に
自慢のソー(弦楽器の方)とコーン(太鼓)演奏。

(あとでコーンは叩かせてもらいました。難しかった!)

村について基本的なことを教えてもらいます。
(通訳:箕曲さん。ああなんて大活躍)

そしていよいよ農家の皆さんにインタビュー。
ここのおうちは大体こんな感じの高床式でした。
素朴なつくり。

私は単なる居候なので、どこかの班にお邪魔させていただこうと
うろうろしているうちに、
なぜか先ほどソーを弾いていた方の
お宅にひとりでお邪魔に上がるということに(笑)
このときはインタビューの趣旨を知らなかったので
スイートコーンをいただきながらご家族の話を伺ったり、
「箕曲はいいやつだ」という話を聞いたり
だらだらのんびり過ごしていました。
せっかくなので、最後に記念写真。

二日目は朝早く7時に起きて、


前日より早い時間に別の村へ。
コーヒー果肉処理施設を見学させていただいたあと、
お昼ご飯。おさかななどなど。
おいしーいけどチェーオ(からし味噌)からーい!


同じく家庭訪問。

今回の家庭訪問では、家計事情についていろいろ伺いました。
調査っぽかったぞ♪

調査終了後はどういうわけかこの片田舎でWiFiが使えるカフェへ。

このカフェはオランダ人とラオス人のご夫婦がやっていらっしゃいます。
かなり町はずれにあるので知らないと来れないと思うのですが、
我々のような外国人旅行者には一部で知られているらしく
他にも西洋人のお客さんが来ていました。
ちなみにご主人は50歳くらい?の元銀行マンで、
脱サラして放浪してここにたどり着き、
いきなり現地で結婚してお店を初めて4年だそうですが、
ラオス語が全く分かりません。
奥さんは英語がほとんどわからないようです。
どうやってコミュニケーションを取っているのか不思議。
(ちなみにかわいいお子さんが2人いらっしゃいました)

というかどうやって結婚したのかとか、
(結婚の儀礼とかどうしたんだろう…?)
旦那さんは「店を始めて英語はずいぶんうまくなったよ!」と
言ってましたがなぜラオス語はぜんぜん勉強しないのかとか
いったい何をどうやったらそもそもここにたどり着くのかとか
もうほんとに謎。
人間ってほんと分からん(笑)


このパクソン滞在では
もちろん現地の人々の暮らしに触れられたことが
一番大きな収穫でしたが、
もうひとつの収穫は、
「人の半構造化インタビューをきちんと観察できたこと」でした。

(*半構造化インタビュー
   簡単に言うと、質問項目を用意してそれに合わせて
   そこそこかっちり質問の答えをもらうようインタビューすること)

もちろんみなさん学部生でこういうインタビューはほぼ初めてですし
決してうまいインタビューではなく、
私も長らく中国で調査をしてきたので
「ああここで私ならたぶんこうやるのに」と
思う所はあったのですが、
そもそもいままで一度も「他人の調査を見る」ことがなかったんですね。
学部時代から院生時代を通じて、もちろん調査演習というものはあって
一人で調査に行って先生にその経過を報告して指導していただくという
授業のようなものはあったのですが、
なにげに「人の背中を見て学ぶ」機会は全くありませんでした。
もちろんそれにはそれなりの理由があるのですが、
良し悪しはともかく、ともかくありませんでした。
それに、私はいろいろ理由があって調査地では
あまり質問項目を書いたノートを持って
「はいインタビュー!」という具合にセッティングして
インタビューをすることがほとんどありません。
(どうしてもカジュアルにナチュラルに
 お近づきになれなかった時の、ほとんど最後の手段に近い)

そういうわけで、こういう「これとこれとこれを聞かなくちゃ!」という
インタビューを横から見れたのは、
自分の調査を見直すうえでとてもためになりました。
しかもその結果に対するコメントを、
現地の先達である箕曲さんからもらえるわけですから、
さらに勉強になります。
(調査で聞くべきことというのは調査をして
 現地の事情が分からないと分からない、
 という構造が現地調査には不可避的にありますので)
なんともありがたし。
さらに俯瞰的に見てみれば、どの村に行くかとかも
箕曲さんの長年の現地調査に裏打ちされた根拠があるわけです。
ミーティングでもどこでも
「箕曲さんにどこまでも先回りされてる!」という感じが
すごくびしびし伝わってきました。
世にスタディツアーは数あれど、
ここまでよくできたものはそうそうないのではないでしょうか。
(…と褒めたたえておいたので早く博論出版してくださいね☆)

そんなわけでとてもためになった2日間でした。
改めて、箕曲さんとドリプロのみなさんありがとうございました!